根管治療・支台築造の時点で無症状だったため、ダイレクトクラウンで歯冠修復を行い終了させました。しかし、3か月後に歯肉腫脹と違和感が生じたため、ルートセパレーションにて分割し、近心根のみ口腔外再植接着治療にて破折修復をした1年経過観察の症例です。


通院中の歯科にて歯根破折を指摘され、インプラント治療の必要性を説明された方です。来院時点では腫脹や疼痛の出現が認められませんでした。歯根破折の発覚から来院までの初動が早く、歯槽骨の吸収や感染の波及が少ないため「残せるかもしれない」と直感的に感じました。


残念ながら近心根だけでなく遠心根も破折しており、極めて厳しい状態です。通常の判断では間違いなく抜歯適応です。


根管治療後、ファイバーポストを用いて支台築造を行いました。ルートセパレーションと口腔外再植接着治療を想定していたため、写真のような形態で築造しております。


経過が良かったため、ダイレクトクラウンにて歯冠修復を行い様子を見ることとしました。

このまま無症状で経過してくれることを期待していたのですが、残念なことに歯肉腫脹が発現してしまいました。

ルートセパレーションにて歯根を分割し、腫脹の原因となっていた近心根の口腔外再植接着治療を施しました。施術中の口腔内写真は出血量が多いため割愛します。


3週間後の経過観察です。腫脹や疼痛の出現がなく、良好に経過しております。


再度ダイレクトクラウンにて歯冠修復を行いました。クラウン遠心歯肉側は気泡ではなく、天然歯の部分がサービカルバーンアウトして写っております。このデンタルだけ見たら誰でも抜歯しか考えないでしょう。

1か月後の経過観察です。歯肉がすこしピリピリする感じがあると訴えられました近心根の歯肉部分にやや発赤を認めます。打診痛や自発痛が出現しておらず、ミノサイクリン軟膏の塗布にて経過を見ることとしました。


約1年経過観察時の写真です。不安だった近心根の歯肉の発赤は消失し、快適に過ごせているとのことで安心しました。デンタルレントゲン上においても、歯槽骨の回復が認められ、ひとまず成功したと考えても良いでしょう。歯根破折から来院までが迅速で、加えて感染の波及範囲が限定的だったことが功を奏したと思います。
以前の完全歯根破折の修復症例においても、破折後、直ちに来院されたことが成功につながりました。
来院が遅れ、感染が進んで歯根膜が壊死してしまうと保存不可能です。
そういった意味でいうと、成功を左右するのは患者さんに依存する部分が大きいと感じております。
・注意事項
症例写真は患者様の了解を得たうえで掲載しております。
無断複写・転載は一切認めておりません。