親知らずにダイレクトクラウンを装着した3年経過の症例

右上8番にダイレクトクラウンを適応し、問題なく3年経過した症例です。

 


 2022年に右上親知らずの違和感を主訴に来院された方です。本人は智歯抜歯に同意しておらず、保存治療を強く希望されていました。多忙のため少ない通院回数で処置を希望されました。前職での治療のため、レントゲン画像を掲載できないことをご容赦ください。

 


根管治療を施術し、支台築造が終了した時点での写真です。たとえ親知らずが健全歯であっても、原則として抜歯しか適応しない先生がいます。ですが、他の臼歯が抜歯になった時のドナーとして使用できる場合があり、一概に抜歯すべきではないと思います。智歯は歯列不正の原因にもなりえるため、患者さんの口腔内状況に合わせて柔軟に対応すべきです。

 


支台築造をした当日中にダイレクトクラウンで歯冠修復を完了させました。最後臼歯は器具のアクセスが難しく、テクニカルセンシティブですが、決して無理なことではないです。わずか3回の通院で完了させることができました。

 


 3年経過した写真です。別の部位の主訴で来院されたため、経過観察することができました。やや着色しておりますが問題なく良好に経過しております。本人も何も気にせず、普通に生活できているそうで安心しました。

 

 コンポジットレジンでビルドアップしているため、強度が心配になります。ダイレクトクラウンを施術し始めて8年くらいになりますが、ほとんどトラブルがありません。本症例のように最後臼歯であっても経過良好です。

 

 

 ダイレクトクラウンは意図せず硬いものが当たってしまったり、破断点を超えた力が加わった時に壊れます。壊れてくれることで、強すぎる力を逃がすことができます。

歯根破折の治療をしていると、ジルコニアやメタルボンドなどの硬いクラウンでのトラブルが非常に多いです。おそらく、強い力が加わっても被せ物が壊れないせいで歯根が割れてしまうのではないかと考えています。

クラウンが壊れないことは一般的には良いことです。しかしクラウンが壊れないせいで、歯の寿命を短くしている側面があると考えています。

クラウンを守るために歯根が犠牲になる。

本末転倒のように聞こえますが、治療の保証はクラウンです。歯根ではありません。クラウンがどんどん硬くなるのは、治療した後の成功率や保証を求めた結果です。

 

・壊れない確実なクラウンを入れることができないから抜歯

・クラウンが壊れることを受け入れて、だましだましで歯を残す

 

どちらを選択するかは患者さんの考え方次第です。

 

・注意事項

症例写真は患者様の了解を得たうえで掲載しております。

無断複写・転載は一切認めておりません。