CR充填で着色させないコツ

CR充填後の頻発するトラブルの1つに着色があります。多くの先生は研磨不足だと考えがちですが、実はもっと深い理由があります。今回の症例では大臼歯を即日で2歯処置した症例の3年経過観察です。

 


 私が最も頻繁に処置するケースがメタルインレーのやり替えです。

再治療を決定する要因として、

 

・自覚症状

・2次カリエス

・マージンラインの適合性

・セメントのウォッシュアウト

 

など、基本的に被ばくを伴わない診査で確認をします。疑わしい場合はデンタルレントゲンでの確認、ないしは介入へと移ります。

 正直に言うと、視診での診査に限界を感じています。最近は審美目的でメタルを除去することが多いのですが、「大丈夫だろう」と思っていた症例で前医での軟化象牙質の取り残しが発覚したり、視診やデンタルで確認困難な部位に2次カリエスが発生していたり…メタルインレーに不安を感じています。

 


 軟化象牙質を除去し、窩洞形成が完了した後の写真です。CR充填では連続2歯でも即日で完了できます。この後の経過観察の写真で説明しますが、MIを意識しすぎてベベルの付与が甘かったため、マージンラインの褐線が生じてしまった部位があります。

 私は全症例の写真を撮影しております。気合を入れた一部の症例ではなく全ての症例を記録しています!これにより、トラブルが発生した際に原因究明の一助になるだけでなく、改めて見返すことにより反省と復習が可能になります。写真に残すことで自分の処置を冷静に俯瞰できるため、新たな気付きもあり自己鍛錬に非常に有用です。


充填後の写真です。即日で白くできると喜ばれることが多いため、モチベーションにつながります。

 


 3年が経過して4年目手前の経過観察です。26頬面溝部と遠心舌側マージンラインに褐線が生じてしまいました。接着不良や研磨不足の可能性もあるのですが、今振り返ってみるとベベルの付与が不足していたため、ノンカットエナメルにCRがのってしまい、着色につながったと推測しております。ちなみに褐線部分より深部でしっかりと接着しているため、2次カリエスに移行する可能性はかなり低いです。

 

 エナメル質への接着は簡単に考えがちです。実験データで接着強度が高く出るからです。ですがインビトロで使用する牛歯は平面にカットされており、天然のエナメル質とは全くの別物です。

 まったく削っていないエナメル質の耐酸性能は非常に高く、35%前後のリン酸で10秒程度の反応では十分な表面活性を得ることができません。だからベベルを付与して耐酸性能が低いカット面を形成して、確実に接着できる環境を作るようにしています。

 CRの歴史を振り返ると、象牙質との接着問題が多いです。トータルエッチング、ウェットボンディング、2ステップ、1ステップ…と象牙質メインでエナメル質への接着はあまり考えられていないのが伺えます。審美性が重要視される時代になってきたことによって、エナメル質への接着が見直されるかもしれません。

 

・注意事項

症例写真は患者様の了解を得たうえで掲載しております。

無断複写・転載は一切認めておりません。