下顎前歯へのダイレクトブリッジの治療方法

下顎前歯の1本欠損はダイレクトブリッジ治療を始めたい先生にもっとも適しております。脱離などのトラブルが少なく、視野の確保が容易なため、比較的短時間で施術可能です。ダイレクトブリッジの治療手順を詳細に解説していきます。

 


下の前歯の治療方法に悩まれておりました。通常のブリッジでは隣の歯を削ってしまうことに躊躇しており、インプラントは怖いため考えていない、とのことでした。ダイレクトブリッジの説明をしたところ、ご承諾いただいたため、即日で施術を進めることにしました。

 


ざっとクリーニングしました。見落としがちですが、歯面清掃は接着にきわめて影響を及ぼす重要因子です。

下顎前歯の欠損は高齢の方によく発生します。低侵襲性であり、通院回数も大幅に低くすることができるダイレクトブリッジは最も適した治療方法だと考えております。


37%エッチングゲルにて30秒程度のハードエッチング処理を施します。まったく切削していないため、通常のエッチング時間では十分な表面活性を得ることができません。確実にエッチング効果を出すために、長めの処理時間が必要です。

 


ボンディングは優しく塗布することをお勧めします。ハードエッチングでエナメル小柱構造に沿ったかたちで凹凸が形成されています。この凹凸に強い力をかけると容易に破壊してしまいます。ダッペンディッシュに多めにボンディングを滴下し、アプリケーターにたっぷりとボンディングをのせて、歯面に垂らすイメージで塗布します。

 


フロアブルでダイレクトブリッジを直接成型します。ここが腕の見せ所です!やや多めに盛って、切削調整したほうが確実に施術できます。下顎前歯は器具の操作が容易なため、直接成型でもポンティック歯肉側を研磨できます。

 


ファインのダイヤモンドポイントで調整します。

 


研磨にはマイジンガーポリッシャーを愛用しております。成形直後のレジンは十分な硬度がないため、目の細かいシリコンポイントでも形が崩れることがあります。マイジンガーポリッシャーは形を崩すことなく、短時間で光沢研磨が可能です。

 


治療終了です。1時間前後の時間で仕上げることができました。

 


1年後に別の主訴で来院された際の経過観察です。着色が進んでいますが、問題なく経過しており安心しました。

 

 下顎前歯欠損は補綴治療の選択肢に悩む部位です。ブリッジは形成量が多く、術後症状が心配です。予防的に麻抜を考えなければならない場合もあります。(予防と言うと聞こえはいいですが、過剰治療にすぎません)

 インプラントは天然歯との十分な間隙を確保することが難しく、歯根に接触する可能性があり極めて危険です。部分床義歯は違和感が強く、審美的に不利であり、発音などの機能面でも劣ります。

 ダイレクトブリッジを習得することで、従来の補綴治療が苦手とするケースに、有意義な選択肢を加えることができます。練習用マネキンを購入して、がんばって練習してほしいです。

 


研修医時代の私と自作マネキンです。お金がなかったのでマネキンを自作しました。思い返せば、大学は夜遅くまで練習できるので、贅沢な時間だったと思います。若い!いや~老けましたね~。

 

・注意事項

症例写真は患者様の了解を得たうえで掲載しております。

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